第121回 泥酔まつ the movie-進撃のアイツそして謎解きは…の後で-1
※このお話の本編はこちら。
- 午前4時。都内の路上。-
イェソンは静かに手を上げると、1台のタクシーが止まった。
小さめのスーツケースをトランクに放り込むと、
シートに背を埋めて呟いた。
「成田まで…。」
まだ残る手のひらの温もり。
この涙も、捨てきれなかった未練も、早く熱を無くして冷めてしまえばいい。
窓の外に赤く光る街路灯に目をやった。
高速に入る手前の信号。
赤信号で車が止まった。
(ダンダンダンダン!!!!)
「えっ!!」
運転手がビクリと身を弾いて窓の外を見た。
「ねーーー!!!おじさーーーーん!!成田までお願いしますーーーーーー!!!!」
これは、きっと夢だろう。
そう、寝ずにここへきたから、俺は眠ってしまったんだ。
「おじさーーーーーーぁあああん!!!なりたーーーー!!!!!あ♡おっぱ♡♡♡」
何かがこっちを指差している。
どうやらこれは夢じゃない。
(ダンダンダンダン!!!!)
よく見ると、黒髪の女性がこっちを指差しジェスチャーをしている。
この?扉を……開けろと?
俺はあっけにとられてロックを外した。
すると扉は威勢良く開き、
女性は満開の笑顔で両手を広げた。
「えっと…あの…。」
「おっぱーーー!!!!会いたかったー!!はい失礼しますよっと!!!」
女性は勢いよく俺の膝の上に乗った。
「あれ?なんかひょっくん変わったー。座り心地ちがーう!!」
「あの…ひょっくんってあの…え…?」
「あ、おじさーん!!成田!成田まで行ってー!」
(逆らっちゃいけない)
運転手は何かを察知したのか、そのまま頷き車を発進させた…。
(でひょっくんって誰だ…)
written by iHatenaSync